これから14回にわたり、水のお話を連載します。
この記事は田村欣也様が10年ほど前郡山の句会 桔槹に発表されたものを、許可をいただき転載するものです。内容は当時のものを反映しており、現在のものと少し離れている部分もそのまま転載しています。
田村欣也 プロフィール
1941年 群馬県生まれ 東京大学卒業
健康管理士上級指導員 桔槹同人 日本記者クラブ会員
元 日本テレビ政治部部長 広報局長
水 (1) 田村欣也
水は分子でありながら電気を帯びています。ほかの物質にはない珍しい特質をたくさん持っているのです。
水はすべての生きものに欠かせないだけでなく、物を溶かし、鉱物をも砕き、蒸気はエンジンを生みました。
私達が毎日口にする水は、健康で、そして満腹でなく、落ち着いた穏やかな気持ちで頂く時が一番おいしいと言われています。特に味覚が発達する子供の頃に飲んだその土地の水が忘れられませんね。朝起きた時の一杯の水、汗をかいた後の水は実においしいものです。でも生温かったら台無しです。沸騰させてから冷ました七十度の水が一番おいしく感じられるのだと聞きました。(十三度前後もおいしいと聞きます)
数年前、同窓の吟行で滋賀県の琵琶湖西岸の高島市へ行きました。その針江地区に川端(かばた)があります。一日四千トンも湧き出す伏流水を各家庭が台所に引き込んで水を溜めます。これを壺池・端池と言い、顔を洗ったり、お米を研いだり、野菜を洗ったり、その後は外の水路へ流します。水路には鯉が飼われていて食器洗いで出た米粒を食べます。ですから水はいつもきれいです。この川端の水の温度が十三度から十四度と聞いて驚きました。一年中変わらない水の冷気で米櫃の温度を一定に保っているので、ご飯がおいしく炊けるのだと地元の方が話してくれました。水は実にありがたいものですね。
突然ですが、山頭火は酒の句より水の句を十倍も多く詠んだと言われています。
へうへうとして水を味ふ 山頭火
腹いつぱい水を飲んでから寝る 山頭火
岩かげまさしく水が湧いてゐる 山頭火